「……黒崎。二度とこんな真似をするな」



ポツリと落とされたラスボスの声は、とても悲しげに聞こえた気がした。



「もう遅い。早く家に帰りなさい」



それだけ言い残して、ラスボスはお城の中へと姿を消した。



「黒崎さん、ありがとうございます……」



家に帰る前に、黒崎さんへとお礼を告げる。


きっと黒崎さんは、ラスボスに意見したことなど一度だってないはず。


黒崎さんは静かに首を横に振った。



「わたくしは明里様に感謝しているのです」


「私に……?」


「はい。中学時代の椿様は、明里様と出会う前のようにどこかに笑顔を置き忘れてしまっていたのです。しかし、またこうしてあなたと過ごすうちに、椿様に笑顔が戻って嬉しいのです」



まるでとても愛おしそうに黒崎さんは言った。



椿の笑顔……。