「なにをしている」



────ドキリッ!!



背中を追いかけてくる尖った声に、慌てて振り返った。



ああ、やっぱりこの声は。



「……椿のお父さん」



振り向かなくても声でわかっただけに身体が強ばる。


その一歩後ろには、不安そうな顔をした黒崎さんの姿もあった。



「星ノ宮の家に、キミはなんの用もないはずだが?」


「すみません……出直しますので……」



私は素直に謝罪する。


私は出入り禁止を言い渡された身なのだから仕方ない……。



「大鳳家の令嬢が、青薔薇に戻ったことは知っているな?」



速やかに帰ろうとしたけれど、それよりも素早くラスボスは口を開いた。



「はい。撫子様にはお会いしました……」


「ほお。ならば、もうわかるだろう?」



ラスボスは顎を上げて私を見ると鼻を鳴らした。