そんな私と椿を冷めた表情で見ていた撫子様は、



「はぁ。まるでおとぎ話ね?これ以上あなた方を見ていられないわ。椿様、わたしは先に失礼するわね」



呆れた顔を隠すこともなく露にすると、すーっと去っていった。



あ、あれ……?


てっきり昨日みたいなことが起きるのかもしれないってヒヤヒヤしていたけれど……。



「で、それいつ食べれんの?」


「……これは、おもてなし会に向けてだよ?」



撫子様のことなど微塵も気にする様子のない椿。


私の方が気になっちゃってる……。



その時、まもなく次の授業が開始される予鈴が鳴った。



「あ、マズい!そろそろ教室戻らなきゃ!」



私がそう言って歩き出した瞬間、



「ふーん。じゃあ今はおとなしく待っとくけど───」



腕を掴まれ、体重が後ろに傾いた。



……ドンッと後ろ向きのまま椿の身体にぶつかり、支えられる。



「待ちきれないから早く食べさせてね?」



耳元で囁かれた椿の甘い声に、私の思考は停止寸前で、小さく頷くのが精一杯だった。