「彼は……私とは違いすぎる世界にいるっていうか……」
────“ 住んでる世界が違う者同士に、奇跡なんて起きるわけないでしょう? ”
撫子様のセリフがフラッシュバックする。
「いいじゃないのっ。誰が誰を好きになったって」
「えっ?」
「恋をすることに、ブスとかデブとかオカマだとか金持ちだとか関係ないわよぉ。誰かを好きになるって素敵なことよ?」
……と、私の目を見つめるローランド先生の眼差しがふわりと和らいだ。
「まだなにもしていないんじゃなくって?」
「っ、」
確かに、告白というか……好きって気持ちを椿に伝えたことはまだ一度もない。
なにひとつ、していない。



