「そこまでしてでも、幼なじみである椿様の隣にいるポジションを手放したくないの?」
……椿の隣にいること。
心の中で繰り返せば、椿の得意気な表情や優しく私を見つめてくれる瞳が脳裏に浮かぶ。
「いわば椿様は高嶺の花。あなたのような人が手を伸ばして届く存在じゃない。似つかわしくないこと、いい加減自覚なさったら?」
撫子様の刺すような言葉に、胸がギュッと締めつけられる。
釣り合ってないことなんて、子供の頃からもう何度言われてきたかわらない。
村人と言われようと、庶民だろうと、それでも私は───。
「いたいです……椿の隣に。許されるなら、椿の笑った顔を見ていたいって……」
例え身の程知らずでも、どうしようもなく願ってしまうんだ。