は、早く教室に戻って火神さんとお昼ご飯を……。
そう思って廊下を歩いていると、第二音楽室からピアノの音色が聞こえてきた。
この曲、前にも戸澤くんが弾いていた曲だ。
繊細で優しい音色は耳に心地よく染み渡る。
あれ?
音楽室が近くなるにつれて、ドアの前に誰かが立っていることに気づく。
あの髪型は……も、もしかして……。
「……な、撫子様?」
恐る恐るその人物の名前を呼ぶと、ハッとしたように振り向いた。
「……っ、」
眉を下げ、切なげな表情で音楽室の中の様子を伺っていたように思う。
「撫子様も、ピアノを弾きに来たんですか?」
「そ、そうじゃないわ。仮にそうだったとしても……あなたと同じC組の彼が今弾いているでしょう」
表情が変わってツンとした口調で言い放つ。



