椿の名前が出てきたことに驚く暇もなく、撫子様は続けた。
「そう。椿様のお父様からあなたのことを全て聞かされたわ。称号を目指していらっしゃるのね」
「……実は、その通りでゴサイマシテ」
緊張がやばい……。
にしても、ラスボスはお喋りにも程がある。
プライバシーの侵害だ。
「ローズクイーンの価値をお分かりになっていないのかしら?石に花咲く、とはまさにあなたのことね」
「………えと?花?」
決してそれはいい意味ではないような気がする……。
「ことわざのひとつよ」
初対面にしてナチュラルにことわざを展開するという知識のマウントをとられ、なお圧倒される。
「残り少ない青薔薇での生活で、たくさんの思い出が出来ることを祈っているわ」
すると撫子様は、戸澤くんに目をやった。
けどふたりの視線がまじわることはなく、撫子様は足早に教室を去っていったのだった。



