私が顔を向けると同時、お嬢様方が一斉に道を開けた。


顎まで伸びた淡い茶色の髪の先は、微塵の乱れもなく綺麗に切り揃えられており、ふんわりと揺れる。



意志の強そうな瞳に、椿と同じ色の白い制服を身に纏い、しなやかな手足を動かし歩く姿さえ、まさに完璧という言葉が当てはまるんじゃないかな……と思った。



「あの財界人の神様と呼ばれる大鳳電器産業会長の孫娘、ローズクイーンともなる大鳳撫子(おおとり なでしこ)様が、我々のようなCクラスにどんな用があるのかしらね……?」



ヒソヒソと囁かれる声にも微動だにせず教室内に入ってくる。


その瞳は、一瞬だったけれど、私でも火神さんでもなく戸澤くんに向けられているように見えた。



「ごきげんよう。榎並明里さん」



へ……?


けど、目の前で足を止めたローズクイーンの挨拶は私に対して向けられていた。