火神さんは綺麗に整った眉をひそめた。
「ウチのお豆腐屋さん、経営が傾いてて……」
看板も傾いてはいるが直す余裕すらない。
────中三の夏休み明け。
お父さんとお母さんがこのままだとお店を続けていくのも厳しくて、店を畳み北国の実家へ帰るしかないのか……と話しているのが聞こえてしまったのだ。
私にもなにか力になれることはないか考えていたある日。
「……この学園の噂を聞いたんです」
「青薔薇の噂?」
火神さんの顔を見て、私はコクリと首を縦に振る。
それは中学のクラスメイト達がこの青薔薇学園について話していた時のこと。
“ え!?100万円相当!? ”
“ そうそう。さすがお金持ちの通う学園は、やることの規模が違うよね! ”
なんでも椿の通うこの学園では、ある称号を得た生徒には100万円相当の金のバーが贈られる……との噂が流れていた。



