「明里がオモチャに見えるなら、当主のくせに親父は見る目がないね」


「なに?」



ラスボスの逞しい眉がピクリと動いた。



「青薔薇ですげぇ頑張ってるよ。そんな明里のことなにひとつ知らないでしょ」


「知る必要などないだろう?結末はもう見えている。庶民の娘が今さら努力したって、そう簡単に変わるわけがない。椿、いい加減にしなさい。お前の未来が生まれた時から決まっていることはわかっているだろう?」



椿の未来が決まっている……?



「青薔薇の称号を得ることがどれだけ厳しいかなんて、親父だからよくわかってんじゃないの?」



椿のお父さんだから……。

どういう意味なのかわからずにいると、



「……なんの話かわたしにはわからないな。口答えをしていないで、お前は当主になることだけを考えていなさい」



尖った口調で言葉を投げつけると、ラスボスは背中を向けた。



「少なくとも俺は、必死に頑張ってる奴を侮辱するような当主にはならないよ?」


「っ、」



顔だけをこちらに戻したラスボスは、唖然としている。


椿の意志のこもった声に、ラスボスはただただ目を見開き驚いていたのだった。