「……両想いってか、婚約寸前かお前ら」
次の日の放課後。
改めて、火神さんと友達になれたことを戸澤くんに報告するとやや呆れ顔で返された。
「相手がいないからって僻む男はモテないよ、戸澤」
「モテなくて結構。むしろ独身希望だ」
手に持っている楽譜をうちわのように扇いで、戸澤くんは舌を見せる。
私は肩を組んできた火神さんと顔を見合わせてクスクス笑った。
嬉しくて、でもまだ少しくすぐったい。
* * *
今日最後の授業が終わりを告げると、私は素早く帰りの支度を始めた。
「明里ー、王子はもう来んの?」
「た、たぶん!椿からの伝言で、教室で待つようにって黒崎さんに言われたの」
今日の放課後、椿の家でやっと華道基礎について教えてもらえることになったからだ。