「ホントはさ、もっと早く離れるべきだった。だけど、明里の隣にいるのがあんまり心地よくて……離れんの……寂しいとか思ってさ」
ごめん……と言った火神さんの声は雨音に負けてしまいそうだった。
私は火神さんを見る。
火神さんの肩を容赦なく雨が打つ。
それでもなお、火神さんはずっと私へ傘を傾けてくれている。
「火神さんは、どこか痛いところない……?」
頷いた火神さんの髪から水滴が落ちていく。
それに紛れて火神さんの頬を雫が伝っていった。
まるで、泣いているように見える。
「よかった」
「えっ?」
驚きに染まる瞳が私を見ている。
強ばった力を抜くように私は声と一緒に大きく息をついた。
「よかったよ。火神さんが無事で」
「……明里?」
「火神さんが狙われてるって聞いて怖かった。もし、顔面凶器が倒されて守ってもらえなかったらどうしようって思ってたの。だから今こうして火神さんが目の前にいて、私はすごく安心してるんだ……」



