お嬢様はみんな車でいらしているので無縁の場所ではあるけど、ヨツバ駅やその商店街は、私の家からは近い場所だ。
「犯人は捕まっていないのよね。わたしのお父様も心配して、護衛班を増員したところよ」
こ、怖いな……。
すると、目が合ったお嬢様のひとりが私の心を読み取ったかのように、
「あら、豆腐屋!あなたは心配無用よ?狙われるのは由緒正しい家系の人間なのだから。ねぇ?」
「襲ってくれと頼まれたところでお断りよ!」
うふふ、おほほ、と嫌味たらたらに笑うお嬢様方。
はい、すみませんでしたね……。
お嬢様達の嫌味にも、当初に比べればもうずいぶん慣れたものだ。
「けど、迷惑だわ!火神組のお嬢様のせいでわたし達が襲われたら、どう責任をとるおつもりなのかしらね!だから嫌よね。宵闇(よいやみ)の中で育ったお嬢様はっ!」
宵闇のお嬢様……?
まるで、火神さんのせいだと言っているみたいに聞こえるんたけど……。