次の日は朝からしとしとと雨が降っていた。
どんよりした色に染まった空は、私と同じようになんだか不安そうに見える。
それを口に出してみれば、
「ポエマーは蒼ノ月ひとりで十分だって」
……と、戸澤くんに笑われてしまった。
まもなく二時間目の授業が始まるけれど、火神さんは学校に来ていない。
「襲われたのは青薔薇の生徒って、本当ですの……?」
スピーチ講座のテキストを取り出していると、近くでお嬢様達が話しているのが聞こえてきた。
「……ええ。B組の子なのだけれど、議員のお父様の講演に付き添っていった時のことだそうよ」
お嬢様達の話に聞き耳をたてると、なにやら昨夜、青薔薇の女子生徒がヨツバ駅周辺で襲われたらしい……。
講演が退屈だったそのお嬢様はホールを抜け出し、珍しい商店街をふらふらと散歩して戻ろうとした。
しかし、その矢先、背後から襲われ車に引きずり込まれそうになった……と。
背筋がぞくりと震えた。