「ち、違う。そんなんじゃ……!」


火神さんは眉を下げて唇を噛む。



「火神さんは……っ、悩んでることや、心配なことが、なにかあるんじゃないかって……」



慌てて否定した火神さんのこんな不安そうな表情を初めて見たから。



「……ごめん」


「謝らないでよ……火神さんはなにも悪いことなんてしてないよ!?」


「……」


「も、もしかして、お家の方が忙しいとかかもしれないし……それなら私が口出しすることじゃないけど」



いくらでも吐き出していいんだよ、と。


身分の違う私でも、友達と呼んでも許されるなら、そう言ってあげれたのだろうか……。



「家のことは……関係ないじゃん……」



その声は聞き取るのがやっとだった。



「ごめん。わたしの問題なんだ」



火神さんの苦しそうな顔に胸が痛んだ。


私の顔を見ることなく火神さんは席へと戻っていった。



どうして、目を合わすことさえしてくれないんだろうか……。



それが、こんなに悲しいなんて知らなかった。