「んなことより、火神はどこいった?この王様の対応を俺に押し付けやがって」
戸澤くんは「これがあの……有名なカニカマか!?」とひとり騒ぐ蒼ノ月様を見て舌を鳴らした。
「あ、あれ?今日も昼休みいないね?授業が終わった時はいたんだけど……」
ここのところ、火神さんは昼休みになると忽然と姿を消してしまう。
昨日だって、忍者も顔負けの俊敏な動きでささっと出ていった。
この前も……なんだか様子がおかしかった。
「お嬢のことだ。家の方が忙しいのかもな」
「……家って。戸澤くんは火神さんの家の事情を知ってるの?」
「むしろお前、マジで知らなかったのか」
あー、とおでこに手を被せる。
「と、戸澤くん?火神さんの家ってなにかあるの?」
「火神の口から聞いてないなら言えねーな。ベラベラ話す男は嫌われるって言うだろ」
確かに、とは言わなかった。



