「いい加減にしてって言ったろ。バカ……」
「ごめん……っ」
強引とは言え、助けてもらった相手に言うべきじゃなかったかもしれない……。
だけど次の瞬間、行き場を無くした私の手を椿がギュッと握る。
そして私の手を自分の頬へ添えると、
「可愛すぎて、独占したい」
「なっ……」
だから、そういうことばっかり言わないでってば。
「ちょっ、王子がご乱心していいの……!?」
椿がどんどん顔を近づけてくるから僅かな距離がゼロになりそう。
「お前のことになると乱れるみたい」
「バカっ……」
「お前こそ。脈、早くない?」
当たり前でしょ……。
椿の部屋で、ましてやこんな状況で不可抗力だよ。
「なにドキドキしてんの?ガキの頃から一緒にベット入ってんじゃん」
「それは遊んでる時の話で。今は子供の頃と違うっていうか……」
「そうかもな。こうやって触りたいとか抑えらんなくなりそうとか考えたことないかも?」
不敵に微笑む椿に、身体全部が心臓になったみたいにうるさい。



