「だがしかし、キミだけの姫君ではないだろう?」


「は」


「隙を見せるとは、青薔薇のプリンスもまだまだだな?」



蒼ノ月様は椿の腕の中にいる私の手をなかば強引に掴むと、ヒョイッと自分の方へと引っ張った。



「なんの真似だ」



椿が怒りを宿した瞳で蒼ノ月様に言うと、



「星ノ宮。僕はキミのそういう顔がたまらなく好きだ」



ひどく妖艶な口調で言葉を浴びせ返した。



「そんなに大切なら、奪ってみせろよ?」



奪う……?


今までの蒼ノ月様とはまるで違う妖しげな声に、私はただただ圧倒される。



「さぁ明里くん。僕と逃げよう」


「っ、え!ちょっと!!ど、どこへ……!?」



蒼ノ月様は動けずに唖然としている私の手を掴んだまま、来た道を走り出した。