どうしたの、と聞こうか迷っていると、



「明里……授業始まっちゃうよ?早くそれ置いてきな?」


「あ!そうだったね……!」



先に火神さんが口を開き盆栽を指さした。



困り果てていた私を見兼ねて「しっかり監視してあげるわぁん!」とローランド先生が朝、盆栽を預かると提案してくれたのだ。


火神さんの横顔が気になりつつも、私はやたら大きくて重みのある盆栽を抱えて教室を出た。



放課後になったら、蒼ノ月様の元へこれを返しにいこう。



……にしても。


火神さんのさっきの表情がまだ頭の中に残ってる。


お嬢、と呼ばれる火神さん。


なにかあったのなら、話だけでも聞きたいところだけど、火神さんから話してくれるのを待つべきなのかな。



そんなことを考えながら運んでいると、



────ドンッ!!



「す、すみません……っ!!」



盆栽のせいでちゃんと前が見えないこともあって、誰かにぶつかってしまった。



「なにしてんの?」


「その声は……椿……!?」