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昼休みになると戸澤くんは第二音楽室へ、火神さんは家の事情があるらしく顔面凶器とともに早退していった。
ひとりになったところで私はお弁当を取り出した。
マナーレッスンで出されたイタリアンはひと口ふた口程度しか食べなかったから、お腹が空いたのだ。
「豆腐屋があなたのローストビーフを羨ましそうにご覧になっているわよ?」
「いやしい庶民はこれだから嫌ね」
教室では執事の方々に囲まれたお嬢様達のランチタイムが開催されている……。
肩身が狭い私は、食事スペースのあるカフェテリアへと移動した。
だがしかし、すぐに私は後悔する。
ジャズのような心地よい曲が流れるだだっ広いその空間は、私には場違いだった……。
しなやかな作りのテーブルと椅子、大きく切り抜かれた窓の向こうにはテラス席。
私が想像していた、いわゆる食堂的なものなど存在しなかった。
当然、食堂のおばちゃんもいなければ¥390と書かれたりラーメンなんかもない……。
シェフの方々がいらっしゃるここは、どこの高級レストランですか?



