「じゃあ、戸澤はその人物を探してるってところ?」


「まあ、会えることなら礼のひとつでも言いたいとこではあるけど。あえてわざわざ探す必要はないかな」



意味深な言葉にも聞こえたような気がする。



「へぇ。あんた許可証もらえるだけあって、ピアノ上手いじゃん!」


「お嬢様の火神に褒められるとは嬉しいな。俺にピアノ教えてくれたひとがすごいからだ」


「ピアノ習ってたんだね?」



私が尋ねると戸澤くんがこっちを向いた。



「いーや?遊びに行った家にロシアから帰ってきたその人が来てて、俺にも教えてくれただけ」


「……ロシア?」


「そーそー。榎並。あんたもよく知ってるだろ?星ノ宮椿。アイツの母親に何度か教えてもらってたことがあるんだ」


「そ、そうだったんだね!」



戸澤くんと椿の意外な接点に私は驚いた。