そこにはピアノを弾くことを条件に入学を許可致します、と書かれていた。
「なっ?」
「ほ、ホントだ!」
これが戸澤くんの入学した条件なんだ。
「ふぅん。明里にとっての推薦状みたいなもんってことかぁ」
「そんなものがない限り庶民の俺が青薔薇に入れるわけないからな。俺ん家、ガキの頃に父さんの会社が潰れてんだわ」
笑って言ってのける戸澤くん。
非常にポジティブ思考なんだろうか。
私は、庶民以外にも潰れるというワードに共通点を感じた……。
なるほど……と、失礼ながらひとり納得していると、
「ただ、差出人がないんだよな、これ」
戸澤くんの言うように、手紙にはどこにも名前がなかった。



