休憩スペースに入り女が振り返る





「で、何の用?」



少し頬を赤らめ上目遣いで見つめてくる女に冷たく言う



言ってくることは想像できる



自分のことを可愛いと思っている女は好きじゃない





「あのっ私、入社当時から兼元さんのことが好きなんです。私と付き合ってくれませんか?」




ほらね






「悪いけど、君のこと知らないし、好きじゃない。他当たってくれる?」




そう冷たく言って踵を返す




背中に「どうして」と抗議の声が聞こえたが、振り返ることなんてしない





今の俺には彼女以外考えられないし、社内恋愛なんて面倒なだけだ






告白してきといて付き合ってみれば「思ってたのと違う」って…



結局、俺の外面しか見ないで告白してくる奴ばかり…



入社して2年目くらいから社内の人間と付き合うとか関係を持つこともやめた



その後は特定の誰かと付き合うとかはなくて






やっと彼女に出会った












土曜日の朝



柄にもなく早起きしてしまい、ゆっくりと支度をする




何を着ていくか…



乙女かっ




と心の中で突っ込み、結局、普段通り、デニムにTシャツ、ラフなジャケットを羽織り少し早いけど家を出る






約束の時間よりも20分も早く着いた



とりあえず中に入りコーヒーを買い、窓側の席に座る






「あれっ?拓ちゃん、昨日ぶりだね~」



そこに杏登場…


昨日の夜こいつとこいつの彼氏と3人で飲んだのになんで今日も会うんだよ…早く仕事行けよ




やばい…




買ったばかりのカフェオレを手に俺の向かい側に座る




スキニーデニムにTシャツとシンプルだが165センチのスラっとした体型に良く似合うものをいつも着ていると思う


だが、足元は下駄…



いつものことだから突っ込まないが、杏のお気に入りらしい


仕事に行く時もその格好なわけね




「ちょ、何でここにいんの?」




1人焦る俺




「これから仕事なんだけど、早く準備できたから時間潰そうと思って入ったら拓ちゃん発見♪」



ニヤニヤとカフェオレに口を付ける



こりゃバレてるな…




「俺、待ち合わせだから早くどっか行けよ」



率直に言う




「え~せっかくこんないい場面逃すはずないでしょう」





杏は男兄弟が多く、男と話してるような多少キツめの口調でも臆することなく返してくる