反応を見られていると思うとどうしていいかわからなくて、逸らした視線の先にはロイヤルミルクティーのカップとガムシロップの空容器が並んで見えた。
コーヒー以外だとよく飲むのはロイヤルミルクティーで、溶けやすいようにお砂糖ではなくいつもガムシロップをもらっている。
全部、知ってたんだ。

「・・・半年も、お疲れさまです」

「こう見えて弱気なのは事実だけど、その分ものすごく優しくする。一緒にいて楽しんでもらえるように努力もする」

沸騰しそうなほどの熱視線を注いで、3分待つ様子もなく続ける。

「さっきからずっと顔が赤いのとか、脈が速いのとかは、食べ頃と受け取っていいの?」

質問攻めは、こちらが不利。

「ひとつ聞きたいことがあります」

「何?」

「名前は何て言うんですか?」

眩しいほどに嬉しそうな表情で彼は本当に名前だけを教えてくれた。

「名字は?」

「教えない」

「なんで?」

「教えたら絶対名字で呼ぶから」

そんなことを言われると何としても聞き出したくなる。
私も熱湯を注ぎ込む気持ちでそっと彼の耳元に口を近づける。

「もっと、あなたのことが知りたいです」

火傷したように赤い顔で彼は、

「半年握ってたからこんなになっちゃったけど」

と、ポケットから携帯電話の番号が手書きで書かれたヨレヨレの名刺を取り出した。
そしてボソボソとようやく聞こえる程度の声で、それでも内側のラインを超えるほどに熱湯を注ぎ込まれる。


食べ頃まではあともう少し。








end