☆ ★ ☆

「た、ただいま」

私はゆっくりと扉を横に引く。

たった今家に着いたところで、私はお父さんへの言い訳を考えていた。

高校生ならともかく、中学生がこんな夜遅くまで出歩いていたなんて、お父さんに知れたら絶対怒られる!

いや、怒られるだけで済めばいいんだけど。

怒ったお父さんが怖いのは、私が一番よく知ってる。

「た、ただいまー」

私はもう一度小さい声で言う。

しかし、家の奥からお父さんの反応はない。

「寝てるのかな?」

でも、靴はちゃんと目の前にあるし、とりあえず見つからないように制服に着替えないと。

そう思ってゆっくりと階段を上がっていくとーー

「なんだ、帰ってたのか結」

「ーーっ!」

上から声が聞こえて、恐る恐る見上げると、階段の上から私を見下ろすお父さんが立っていた。

「お、おおお父さん!」

な、なんでお父さんが二階に?!

パニックになりつつ、私は必死に言い訳を考える。

「えっと、これはその……」

「呼んでも返事なかったから、てっきり寝てるかと思っていたが、まさか着物を着ていたなんてな」

「え……」

まさか着物をきていた?