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「まったく、珠のばか!」

着物の着付けが終わって、華と波留と一緒に珠の居る部屋へと歩いていたら、部屋の中から聞こえてきたのが。

「私が愛しているのは、ヒナゲシだげだよ」

その言葉が突然聞こえて胸がいたんだ。

「もしかして、ヒナゲシ様がお目覚めになられたのかな?」

「そうかもしれないね」

華と波留は私の後ろで声を潜めて話している。

しかし、声を潜めたところで私の耳には届いていた。

だけど、今の私には関係ない。

私はいま怒りを抑えるので必死なのだから。

「へぇ、珠ってやっぱりあのヒナゲシのこと好きなんだ」

「ゆ、結様?」

私は怒りで肩を震わせる。

やっぱり、「愛してる」とか簡単に言う珠が、私のことをお慕いしているとか絶対あり得ない。

「あれ?皆さんお揃いでどうしたんですか?」

「朝霧?どうしたのお茶なんか持ってきて」

「みなさんでお茶でもと思って」

そんな朝霧の言葉に華と波留は、朝霧と私を交互にみる。

「お茶ねぇ、いいんじゃないかな?」

私は、朝霧に微笑んで見せる。

「ただし、珠ぬきでね」

そして、私は部屋の障子を開けて今に至る。

「いたたた。もぅ何するのよ小娘!」

「それはこっちの台詞だよ。やっぱりその子、珠にとって大切な子なんじゃない」

「ちょ、ちょっと待ちなさい!私の話しを」

「誰が珠の話なんて信じるものかぁ!」

私は、もう一発ハタキで珠の頭を引っ叩く。

そんな私に驚いたのか、ヒナゲシは怯えた瞳を私に向けていた。

「ごめんなさいね、私はこれで失礼するから」

「ちょ、待ちなさいってば!」

珠は私の腕をつかむ。

「もうなに?私は珠と話すことなんてないんだけど?」

私はギロリと珠を睨む。

珠は一瞬怯んだが、それでも私に言葉を続ける。