神代駅から外に出ると目の前に見覚えのある青い車が止まっていた。

「おーい、結!」

「あ、お父さん!」

荷物を手に持って私はお父さんのもとへと駆け寄った。

「久しぶりだな結」

「うん、お父さんも変わらず元気でよかったよ」

お父さんと会うのはこれが十年ぶりだ。

私にとってお父さん印象は【怖い】だった。

いつも怒った表情をしていてそんなお父さんが苦手だった。

でも十年ぶりに会うとなると印象はだいぶ変わるものだ。

今のお父さんはとても優しい表情をして私を見ている。

「よく私だって分かったね」

「そりゃ分かるさ。娘だしな」

十年離れて暮らしていて顔立ちや身長、声音だって変わった。

それでも私を娘だと分かるお父さんは、やっぱり私のお父さんだった。

「でもごめんね、急にこっちに来ることになって」

荷物を車に詰めて私は車に乗り込む。

「仕方ないさ。友梨(ゆり)の仕事の都合だしな」

「一年くらいはあっちで仕事するからって言ってたよ」

「友梨も大変だな。今度は海外の方まで引っ張り回されて」

「そうだね。少しは休んでほしいって思うけど、お母さんの好きな事だから止められないんだよね」

お母さんは自分の仕事が大好きで誇りを持っているんだ。

そんなお母さんは私の密かな憧れの存在でもあるのだ。

「結は何か夢でもあるのか?」

「夢かあ……」

私は少しだけ考えてみる。

でもすぐには浮かんでこなかった。

私の夢ってなんだろう?