私は、その話しを聞いてゾッとした。

人間は、自分の欲望のためならなんだってする。

それは、神様も同じなんだ。

「そんなとき、珠様が助けてくれたんです」

「珠が?」

珠が二人を?

「始めは私を、次に波留を神使として迎えてくれたんです」

珠がそんなことを……。

でも、いったいなんで?

「神様や神使たちの結婚では、あるルールが設けられています」

「あるルール?」

「それは、神様と神使では結婚は不可能ということです」

「あっ」

その言葉で理解した。

珠は、華と波留が神様と結婚しないように二人を神使にしたんだ。

「そのおかげで、お父様の用無しとされた私たちは家を破門され、こうして珠様にお使えしております」

「珠様には、返しきれない恩があります」

二人は、胸に手を当て優しく微笑んだ。

そんな二人につられて、私も微笑んだ。

「神様と婚姻を結ぶとき、私は二度と波留には会えないと思っていたんです」

「ですが、珠様がもう一度縁を結び直してくれました」

そっか、だから珠は縁を結ぶんだ。

もう一度縁を結び直すことで、大切な人にもう一度会えるようにとーー。

「珠様は、あまりご自分のお気持ちを表には出しませんが、一度だけお気持ちを聞いたことがあります」

「珠の気持ち?」

「それは、結様のことです」

私のこと?

でも、私と珠は十年ぶりに再開したばっかりだし、それまでは全然会うことはなかった。