「今の……」

今の声には聞き覚えがった。

俺は、じっと声がした方を見つめた。

「何を勘違いしてんのかしらね、私は……」

あいつが、ここにいるわけがない。

あいつとの縁は、とっくに切れているんだ。

「それとも、まだ私のことを恨んでるのかしら、むすび」

「むすび」という名前を小さく呟く。

彼女は、二度と俺のところには現れない。

なぜなら、彼女は俺が殺したからだ。

「嫌なこと思い出しちゃったわね」

頭を左右にふり、気持ちを切り替える。

「今は、結とヒナゲシのことを考えなくちゃね」

そう言い、着物を持って俺は部屋出て障子を閉めた。