☆ ★ ☆

「いいんですか?」

俺の様子を伺うように朝霧が恐る恐る聞いてくる。

「いいのよ、あとでちゃんと説明するから」

「でも、そうなりますと結様には神様になるというお話しをしなくては」

「それはーー」

俺は言葉を詰まらせた。

結にどうやって話せばいいんだよ。

だいたい、結と俺が婚姻を結ぶのだって上からの指示だ。

「私は、あの子が神様になるか、人間として生きるか、自分で選んで欲しいのよ」

「それですと、珠様は上の方々の命令を破ることに」

「いいのよ、怒られなれているから」

上の連中は信用できない。

あいつらは、結をどうにかしようとしている。

きっと、蓮だって薄々気づいているはずだ。

だから蓮は、結に縁結び見習いの話を持ちかけ、俺のそばに置いておくように仕向けたんだ。

結から目を離すなという意味で。

「朝霧、ヒナゲシを部屋へ」

「はい」

朝霧にヒナゲシを託し、俺は奥の部屋へと向かう。

「珠様、どちらへ?」

「ちょっと奥から着物をとってくる」

結の着物は土まみれで洗わないといけない、なら代わりに着物が必要だ。

「確かこの部屋に」

部屋の中は上の天井までタンスがびっしり詰まっている。

この中から結に似合う着物を選ぶのはほねがいるな。

「どれにしようかしら?」

女ものの着物は大抵揃っている。

別にあの子が嫁いで来たときの為とか、そんなんじゃないから。

「あったあった」

結に似合いそうな着物をひっぱり出す。

「さてと、じゃあ戻って」

「珠」

「っ!」

部屋からでようとした時、誰かに名前を呼ばれ振り返る。