「ねぇ珠、なんでこの子は珠に飛びついて来たの?」

「それはきっと、私がこの子との面会を朝霧に頼んだのが原因ね」

そういえば、朝霧って誰だろう?

珠の神使かな?

「なんで珠自身が会わなかったの?」

「それには、色々と面倒くさいことが……」

「そうなの?」

「大人の事情よ」

大人の事情ねぇ、それはとても複雑なことなのだろう。

私が思っているほど、糸のように複雑にーー

「ほら、着いたわよ」

「えっ、もう!?」

気がつくと、私達の目の前に一つに屋敷が建っていた。

見た目は旅館に見えるけど、きっと中は私が想像するよりも広いのだろう。

だって、扉が見上げるほど大きい時点でそう考えざるおえないからだ。

「で、でか……」

「ほらほら、さっさと行くわよ」

珠は行き慣れたように扉に手を当てる。

「朝霧、私よ。扉を開けてちょうだい」

「はい、珠様!」

中で男の子の声が聞こえると、扉に何かの紋章が浮かび上がる。

そして、ギシギシと音を立てながらゆっくりと開いていく。

「す、すごい……」

扉が完全に開ききると、扉の影からひょこっと顔を覗かせる男の子がいた。

か、かわいい!

思わずそう思ってしまった。