「お待ち下さい!珠様ー!!」

「え?!」

「げっ!」

ヒナゲシは、高くジャンプすると私たちを捕まえにかかる。

「っ!」

「きゃっ?!」

珠は、自分の位置と引き換えに私の手をグイッと引く。

「珠?!」

珠は一瞬私に微笑むとヒナゲシの下敷きになる。

「た、珠!!」

すごい土煙と共に、珠とヒナゲシの姿が見えなくなる。

周りの人達もなにごとかと騒ぎ始める。

逃げる人もいれば、興味ありげに近寄ってくる人たちもいた。

だけど、今の私にはそんなこと関係なかった。

「た、珠!!珠!!!」

私は何度も珠の名前を呼んだ。

でも、珠からは返事が返ってこない。

「珠ぁぁぁ!!」

「うるさいわよ!」

「っ!」

土煙が晴れ始めると、中で二つの影が動くのが見えた。

そして、そこにはヒナゲシと抱えた珠が立っていた。

「珠……」

それを見た私は安心する。