結と縁結びの神様

「今のあんたは、縁結び見習いよ。それは、神様に認められても当然の位置なんだから」

「じゃあ、もし私がその気になったら」

「神様なんて、簡単に殺せるわよ」

「っ!」

私の体に悪寒が走った。

神様を殺すだなんて、そんなことは絶対出来ない。

でも、今の私ならそんなこと簡単に出来るんだ。

もしかして、いつかそんな日が来るのだろうか?

いらついた神様、うざいと思った神様、心からいなくなって欲しいと思った神様。

そんな神様も、今の私なら簡単に……。

「小娘」

「っ!」

珠の声に私は我に返る。

そして、恐る恐る珠の顔を見上げた。

「た、珠……。私――」

言葉を続けようとした時、珠は私の目線に合わせてしゃがみこむ。

「大丈夫よ」

そして、また優しく私の髪を撫でてくれる。

「あんたがそんなこと出来る子じゃないってことくらい、私だって知ってるわよ」

「でも珠!いつか……、いつかは来るんじゃっ!」

人間は、神様とは違ってすぐ心に闇が生まれる。

それは、些細なきっかけで出来ることもある。

「馬鹿ね。だから、私があんたの傍にいるんじゃない」

「え?」

「あんたが馬鹿なことしないように、私が傍にいてあげるから、安心しなさい」

「珠……」

珠の言葉が私の胸に響く。

目尻が熱くなるのを感じ、私は泣かないように必死に耐えた。

「だから、私の目の届くところにいなさい」

「うん」