結と縁結びの神様

「ほら、行くわよ」

そして、すらっとした指先。

私は、少しためらうように珠の手に自分の手を乗せる。

これじゃあまるで、少女漫画で読んだ、王子様がお姫様の手を取るシーンみたいだ。

「あんた一人じゃどこ行くか分からないから。仕方なく手を握ってあげるんだからね」

「わ、分かってるよ!」

今の一言でムード台無しだ。

でも、珠と手を握るのは嫌いじゃない。

珠と手を握っていると、心地いいし安心する。

そう、いつまでも握っていたいと思えるほどに――

珠に案内されながら、私は結び世へとやってきた。

「あそこに見えるの、なにか分かる?」

「あそこって?」

珠が指をさした先を振り返ると、そこは空高くそびえる塔みたいなものが立っていた。

「塔?」

「あれはね、投獄塔というのよ」

「投獄塔?」

それってつまり、何か悪いことをした人を閉じ込めておく場所?

「あそこはね、神殺しをした人が入るところよ」

「か、神殺し?!」

思っていた以上にやばいやつだった!

「神殺しをする人なんているの?」

「いるわよ。例えば、恋人だった男が他の女と浮気をしていて、それを知った彼女が嫉妬して、その男を刺し殺したとか」

「え……」

「あとは、たわいもない喧嘩で殴り合いになって、思わず殺してしまったとか」

そ、そんなことって神様同士でもあるんだ。

ちょっと意外だと思って視線を下げた。

「だから小娘、絶対神殺しはしてはいけないわよ」

「私がそんなことするわけないでしょ!だいたい、ただの人間の私が神様なんて殺せるはずないよ」

神様と私の力の差なんて月とスッポンだよ。

絶対敵うわけがない。

「そんなことないわよ」

珠の視線に私の体は強ばる。