え、まじであいつが来るの……?

俺はあとずさる。

そして、一度咳払いをしてから朝霧に言う。

「朝霧、その面会私の代わりに出ておいて」

「ま、またですかぁ?!」

そう、ヒナゲシとの面会は今日が初めてというわけではない。

彼女は、暇さえあれば俺に面会を申し込んでくる。

もちろん、最初は付き合っていたさ。

だけど……。

「いいかしら、これは命令よ!」

「わ、分かりましたよ。ですけど珠様、いい加減逃げてばかりですと、ヒナゲシ様もお怒りに」

「そ、それもそうね……」

ヒナゲシを怒らせるとめんどくさいからなぁ……。

だけど、今日は結と会う約束がある。

「悪いけど、ヒナゲシよりも大事な子と約束してるから」

「それは、結様でしたか?」

「そうよ。縁結びの神様について教えるって約束してるのよ」

「珍しいですよね、珠様が自分から動くだなんて」

そんなの自分でも分かってる。

「仕方ないでしょ。面倒見るって言ったんだから」

俺は外を見つめた。

蓮が結を縁結び見習いにしたのには、きっとなにか理由がある。

そして、その理由にはなんとなく気づいている。

あいつは、本当に何を考えているのかわからないやつだ。

「朝霧、悪いけどちょっと出かけてくるわね」

「どちらへ?」

朝霧の言葉に振り返り、優しく微笑んでから応える。

「お墓参りよ」