初夏の風が教室の中に吹き込み、真っ白なカーテンを揺らす。

「今日からこの教室に転入してきた、中務結です。よろしくお願いします」

新しい制服を身にまとって、教卓に立つ私は深々と頭を下げた。

今日から私は、桜ヶ丘中学校に通うことになる。

ちなみにクラスは【二-三】だ。

「じゃあ、中務さんは窓際の一番後ろの席に座ってね」

「はい」

担任の先生に促され、私は指定された席につく。

ふと窓の外を見ると、木々に囲まれた赤い鳥居がはっきりと見えた。

昨日あんなことがあっただなんて思えない。

あの後私は、珠に連れられてお墓の前に戻ってきた。

「送ってくれてありがとう珠」

「仕方ないでしょ。あんたの面倒を見ることになったんだから」

「そうだよね。ごめんね……」

しょんぼりと肩を落とす珠は、私の頭に手を置く。

「珠?」

「私の方こそ、色々とごめんなさいね」

「え?」

なんで珠が謝るの?

迷惑をかけたのは私の方なのに。

「だけど、甘やかすつもりはないから。私が面倒見るからには、あんたには立派な縁結びの神様になってもらうわよ」

「神様って、私は人間だよ」

「……それもそうね」

珠は胸の前で腕を組むと考え始める。

なにを考えているのかな?

「まぁ、とりあえず今日はもう帰りなさい」

「うん」

珠に背を向けて、私は鳥居の方へと向かう。

けど、最後に振り返って珠に声をかける。

どうしても、確認したかったことがあるからだ。

「ねぇ珠」

「なぁに?」

珠は、優しく返事をしてくれた。

それがなんだか嬉しくて、自然と顔がほころんだ。

「明日も会いに行ってもいい?」

「いいわよ。明日は、縁結びの神様について教えてあげるから」

「うん!」

私は珠に手を振って階段を駆け下りて行った。

そして、今に至る。