結と縁結びの神様

男の人は慌ててしゃがみ込んで、着ていた着物の袖で涙を拭ってくれた。

「そんなに大好きな猫だったのね」

「うん……大好きだった……」

私は尻尾に顔を埋める。

「はあ……あんた名前は何て言うのさ」

「中務結(なかつかさゆい)です」

「なにその噛みそうな名字……めんどくさいから小娘で良いわね」

「小娘じゃないよ! 結だよ!」

「あんたみたいな子供は小娘で十分よ」

私は頬を膨らませてじっと男の人を見つめた。

「あなたの名前は何ていうの?」

「あたし? あたしは……」

男の人は少し考えてからニッコ笑うと応えた。

「珠(たま)よ」

「た、珠?」

その名前を聞いた私は飛び上がるほどに喜んだ。

「もしかしてあなた珠なの?!」

「そうよ。あなたが大好きな珠よ」

「ほ、ほんとに!」

「ええ、そうよ」

「ほんとに! ほんと!」

「うるさいわよ。そこは素直に信じなさいよ」

珠はがしっと私の頭を掴む。

「とりあえず今日はもう帰りなさい」

「いやだ!」

「言う事を聞きなさい!」

私は珠から離れまいと尻尾に抱きつく。

「離れなさいよ! 帰れないじゃない!」

「珠と離れたくないもん!」

私は強くそう叫んだ。