悔しかった。
腹が立った。

でも、反論しようがなかった。私の大学生活なんてそんなもんだ。

しかし、泣くもんか。

怒りで溢れてくる涙を、ぐっと堪えながら、席を立つ。


「帰る」
「おい、」


酒に浸され、混沌としたこの場では、私達に注目する者なんて、誰も居なかった。



雨は執拗に降り続いていた。朝よりも激しさを増していた。

傘は置いてきてしまった。
雨の雫が髪から滑り落ちてゆく。
服がどんどん濡れて、色を変えてゆく。

歪んだ世界。

涙が止まらなかった。
ただ自分の愚かさに涙が止まらなかった。

空 虚

この二文字が、私の心の真ん中に根を張り、蝕んでいく。


「ソウちゃん……迎えにきて……っ」

気付けば、私はソウちゃんに電話を掛けていた。

「えっ、どうしたの?」

その声の奥は、ザワザワとしている。
そういえば、ソウちゃんも今日職場の飲み会だって言ってたな、と思い出す。


「泣いてる? どこにいるの?」
「ーー駅」
「わかった、今から向かうから」


しかし、そこでハッとした。

電話口の向こう、雑音の中に、

『またあの子からー?』
『なんなの?』

そんな声が、かすかに聴こえてきたからだ。


「……ごめん、やっぱりなんでもない」


私……とてつもなく、迷惑な女だ。
彼女でも何でもないのに。

「え、どうした?」


--大体、お前は男に依存しすぎなんだよ


ハヤトの言葉が頭に響く。
図星だ。

私は、とつぜん虚無感に襲われて、通話を切った。