想像していた通り鳴き声の主はオヤツコーナーで1人ポツンと立っていた。


赤いスカートに白いブラウスを着た、3歳くらの女の子だ。


周囲の大人たちは気にはしているものの、声をかけようとはしない。


あたしは少女の隣にしゃがみ込み、色素の薄い茶色い髪をなでた。


突然頭を撫でられたことに驚いたのか、少女は一瞬泣くのをやめてあたしを見た。


大きな目には涙がいっぱいにたまっていて、またすぐに泣き出してしまう。


「心配しなくても大丈夫だよ。お母さんやお父さんは一緒に来ていたの？」


優しく声をかけるが、少女は更に声を大きくして泣きじゃくる。


人に心配されたことで甘えが生じたのかもしれない。


「迷子なら、お母さんやお父さんを一緒に探してあげるよ」


そう言い、小さな手を握りしめる。


あたしの手のひらにすっぽりと収まってしまうくらいの小さな手は、フワフワと柔らかく暖かかった。


少女は抵抗しない。


「自分のお名前、わかる？」


「……ナナ」


少女は泣きながらもそう返事をした。


初めて聞く少女の声はアニメのキャラクターのように、可愛らしい声だった。


「ナナちゃんか。じゃぁ、お姉ちゃんと一緒に行こう」


そう言い、あたしは歩き出したのだった。