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イジメっ子がそんなに簡単に変化することはない。


そう思っていたけれど、今日の久志はいつもと違った。


自分から積極的にクラスメートたちに話かけ、明るい笑顔と笑い声を上げている。


その変化にクラスメートたちは驚いていたけれど、一緒にいるあたしたちを見て安心したかのように久志に話しかけていた。


イジメはもうなくなったんじゃないか。


そんな風に感じているのかもしれない。


「蘭は勇気を出して僕を助けてくれたんだ。僕も頑張らないと」


昼休みの中庭。


3人でお弁当を広げてベンチに座っていると、久志がそんな事言い出した。


「あたしなんて、何もしてないし」


少し照れくさくなってぶっきら棒にそう言った。


「あらら? 欄ってば照れてるの?」


右隣に座る早苗が茶化して来る。


「別に、照れてないし!」


そう言ってそっぽを向くと、左隣に座る久志と目があった。


久志はクスクスと笑いながらとても幸せそうにしている。


その表情が暖かくて、やさしくて、あたしの心の中までジワリと温もって行く気がした。