一度リセットするには眠ってしまうのが一番だった。


眠って起きた時には頭の中のグチャグチャが綺麗に整理されているのだ。


イジメの声を思い出すと気分は落ち込んでしまうだろうけれど、それでも今ほど嫌な気分にはならないはずだ。


できれば、目が覚めた時に世界が１８０度代わっていればいいのにとさえ思う。


でもそれは無理なから。


せめてみんなが帰っていて、どうでもいい会話を聞く必要がありませんようにと、願うだけだった。


しかし……。


目が覚めた時、あたしは窓から差し込み始めた西日を見た。


太陽は頭上から少し傾き始めていたようで、スマホを確認すると今日の下校時刻はとっくに過ぎていた。


思っていた通り、みんな先に帰ってしまったようだ。


美鈴たちから何件かメールができていたけれど、それは無視した。


微かに差し込み始めた西日がとても綺麗で窓に近づく。


オレンジ色をした太陽の光が木々の合間を縫って地面へと降り注いでいる。


木漏れ日は葉が揺れるたびにキラキラと宝石のような輝きを放つ。


「綺麗……」


窓を開け、地面を見つめる。


３階に位置するこの場所からじゃ、地面で輝いている綺麗な木漏れ日をしっかり見る事ができなかった。


不意に、このまま飛び降りてしまえばいいじゃないかと思った。


あたしは毎日に退屈をしている。


退屈だけじゃない、その中には数々の苦痛がちりばめられているのだ。


当たり前の生活をしているようにしか見えないかもしれないが、その当たり前があたしにとっては苦痛なのだ。