奏でるものは~第3部~



1回忌。
改めて、あれから1年が過ぎようとしていることを知らされる。

日頃はみんな自分の忙しい生活の中、胸の中に澱んでいた悲しみが浮き上がってきたようで、言葉が少なくなる。

「孫の法要に出るとはな」

祖父母もツライのだろう。

慰める言葉を、同じ遺族は知らない。

そして、みんな同じ気持ちだからなのか、静まり返る。



「今日はありがとうございます
一年はあっという間で、唯歌も驚いているかと思います。
今日は唯歌を偲んでやってください」

父が言う。


「献杯」


全員でグラスを掲げる。

親族もやっぱり悲しんでいた。
悲しみは、癒やされない。

それでも、亡くなった姉を、彼女の気持ちを思いやる。



ようやくみんな箸をとった。