「病院で……」
あの時を思い出して、言葉に詰まる。
「亡くなった後に看護師さんから、治療のために金属類を外したからって、手渡されたの。
父にもらったネックレスと一緒に指輪があった。
大切な人がいたんじゃないかって、その時知ったの」
功さんの顔を見ずに言ってから、功さんをみて続けた。
「姉は指輪をつけたまま、病院に運ばれたの。
家では見たことなかったから、本当に驚いたわ。
家族には隠してたけど、大切な指輪だったんだね」
「…………そうか」
ポツリと力ない声で返事が来た。
「あの指輪は、俺の誕生日にペアリングを俺が買って、つけててほしい、って渡したんだ。
俺と会うときは必ずつけてた。
俺はいつもつけてたけどな。
それで、優たちに冷やかされたよ」
仲良かったんだね、
お姉ちゃん、良かったね
「お姉ちゃんはその指輪で幸せだったのよ。
だから、唯歌のところに置いておきたいの。
功介さんは、新しい指輪をつけて幸せになってほしい」
「……唯歌が離れるのか?」
「貪欲に幸せを求めることが、生きていくことでしょ?
功介さんは、生きていくの。
好きでも、幸せのために別れることもあるから」


