翌日、朝から挨拶に伺う。
車の後部座席に乗り、着付けの黒土さんのところに向かう。
日本舞踊の衣装は演目に合わせて着付けも全く違うので、打ち合わせからいつもお世話になっている。
丁寧に対応してもらい、香典返しを渡し、忌明けの報告をして、明日は衣装合わせですね、よろしくお願いいたします、と挨拶して席を立つ。
髪結い師の前橋さん、明るくて気さくな人である。
日本髪の鬘も演奏の時のヘアメイクもいつもお願いしている。
この度は…と挨拶して忌明けの報告をした。
前橋さんにも明日の衣装かつら合わせの念を押され、よろしくと挨拶して、玄関をあとにする。
和楽器店の和田さんは、楽器でお世話になっている。
ご自身も演奏家で家元でもありお稽古もみてもらう。
同じように挨拶と報告をした。
呉服屋の池園さんは、直接店に向かい、応接室で挨拶をする。
日本舞踊の衣装も演奏の時の和服もここで揃える。
少し話したあと、店を出て家に向かった。
「お疲れ様。
午後から練習でしょ?」
母が話しかけてくる。
「ん、食べたらすぐに行きます。
お父様たちも、お疲れ様ね。
午後からも頑張って」
ありがと、と母がニッコリ笑うと姉の顔を思い出す。
帰る頃には昼御飯もできており、食べるとすぐに浴衣に着替えた。
練習を終えて、午前中に忌明けの挨拶回りをしたことを報告する。
「お疲れ様」
祖母の声も、少し低くなる。
「まだ、辛いと感じても、あなたは自分をしっかり持って、せっかくの高校生活を楽しみなさい」
まだ辛いと感じているのは、祖母も、なのだろう。
お稽古の後、暗くなってから家に戻るが、両親はまだ戻っていない。
姉の部屋に久しぶりに入り、指輪を眺めた。
―――これは、どういう……?
聞いても返事はないが、考えずにはいられない。
それでも朝は来るから。
私は、生きていくから。
いつか、伝えられますように…


