奏でるものは~第2部~




木曜日、午後はお稽古が無かったので、優さんと久しぶりに会った。

バイクで迎えに来てもらい、優さんの家に行く。

ソファーに座ると、持ってきたお菓子を広げる。
食べていると、

「この前の着物って…」

「あ、そういえば会ったね。
あの時はほんとに習い事。
せっかくのお稽古だから、和服でって言われてるの。
夏の暑い中は辛いのよ?
意外に似合ってた?」

「…なんか、着てることが自然って言うか」

「フフ…そうかもね。
着物で外を歩くと、立ち振舞いの練習にもなるからって。
電車はちょっと大変だから、駅まで送ってもらってから歩くの」

「そんな練習もあるんだな。」

感心したような優さん。

着物で発表会の本番を迎えることが当たり前の習い事をしていることを、いつか打ち明ける日が来るのだろうか。
今は普通の女子高生として、優さんたちと過ごしたいから、まだ、言わない。