「え!?」


キャンディの先輩侍女が貴公子さまにプロポーズされた!?

しかも夕日の見える丘とは、乙女が憧れるロマンチックなシチュエーション。なんという素敵な話を聞き逃していたのだろうか。

シルディーヌは食べることも考えることもやめ、まるで自分のことを話してるかのように頬を赤らめているキャンディの横顔を見つめる。


「それで、その方はどうお返事したのかしら?」


ペペロネが瞳を輝かせて尋ねると、キャンディはもったいぶるように間を置く。

ワクワクする空気がシルディーヌたちのテーブルを包み込み、期待感たっぷりの視線がキャンディに集中する。

そのみんなの表情をうれしそうに眺めた後、キャンディはにこーっと笑った。


「もちろん、OKしたそうよー!」


再び興奮した声があがり、食堂内で一番盛り上がっているテーブルとなる。

みんなの注目を浴びてしまうが、シルディーヌたちの興奮は収まらない。


「どこで出会ったのかしら?」

「お相手の貴公子さまは貴族院のお方なの?」


今までは、想像していただけの侍女と貴公子のカップルだったが、キャンディの先輩侍女とはいえロマンスを身近に感じ、恋への憧れがいっそう大きくなる。


「それがね、貴族院のお方なんだけど、初めて会ったのは、街の紅茶店だって言っていたわ」

「紅茶店だなんて! そこで出会って、どうやって恋に発展したのかしら?」