それでもいいって、いったじゃん。


彼女はまた深く呼吸をすると、涙をグイッと拭って立ち上がった。

どこへ向かうのかと思えば、
彼女が止まった先には、先ほどまできっと存在しなかったであろう。


木が、大きく、凛とそびえていたのだ。


「これ、なんだかわかる?」



「桜の…木…?」

問いかけられ、自信なさげに答える。
理由はただ、この木が立派すぎるからで、それ以外になかった。幹はもちろんのこと、花びら一枚一枚が、くっきりと淡く。それでいて力強い不思議な色をしているのだ。