【夏祭り会場/催しステージ】

自分より少し高いステージの上に立っている里奈を、俺は下から見上げた。

……。

「里奈ちゃん、最高に可愛いね。」

ついさっき…。
俺がステージ下に駆け出す前に、涼が言った。


「将馬君は、いつもあんな里奈ちゃんを見てたから…。
近過ぎて、当たり前で…。よく見えてなかったんじゃない?」

その言葉は、悔しいけど…。
当たっていた。


「今日、遠くから見て…。分かったでしょ?
誰を想って、いつも里奈ちゃんが可愛い表情をしてたか…。」

「……ああ。」

短く返事をすると、涼は安心したように微笑んで、俺の背中軽く押した。


「今度はちゃんと将馬君が迎えに行ってあげて?
笑顔はもちろん。あんな風に里奈ちゃんを泣かせる事が出来るのも、涙を止める事が出来るのも、君だけなんだから。」

……そうだ。
里奈は、泣き虫なんじゃない。
いつだって、俺の事を真剣に想っててくれただけなんだ。

……
………。