ウソ……。
「マジか」
智の小さくつぶやく声は焦りに満ちてる。
道は途絶えていた。
前はガケ。
後ろを振り返ると、続々と集まってくる男5人。
追いつめたことでホッとしたのか、全員がしたり顔。
悔しい。こわい。かなしい。
つかまりたくない、絶対に。
智をチラッと見ると、
窮鼠猫をかむ。まさにそんな表情でいて、
私はそれだけで少しだけ不安が薄れる。
智はあきらめない、どんな時も。
こんな時でも絶対に。
私ももうあきらめない、絶対に。
唇をぎゅっとかみしめる。
私たちは彼らと対峙した。
彼らは後ろがガケで私たちが観念してると踏んだのか、
特に距離をつめるでもなく、じっと見張ってるだけ。
どうしたらいいんだろう。
「帝、こちらです」
そして、奥のほうから阿倍さんとともに現れる孝徳天皇。
やっぱり、夢と一緒だ。
でも、決定的に違う。
今の私には智がいる。
「よくもこのワシの目を盗み、逃げようとしたな」
にごりきった目に怒りの炎がメラメラと燃えてるのがわかる。
そして、じりじりと距離をつめてきた。
「美姫、飛ぶぞ」
え!?
智をチラッと見ると、その横顔は真剣そのもの。
「言ったろ?
オレたち離れられない運命だって」
そう言って私を見てニッと笑うと、智は後ろのガケに向かって飛び降りた。
手をつないだままだった私たち。
当然、私もひきずられるようにしてガケをおちていった。
離れられない運命 終