杏花音の言葉を聞いて胸が苦しくなった。

お母さん、か。

杏花音や葵から『お母さん』と聞くと胸が苦しくなる。

そういえば、そろそろあの日か。

あの日のことを、杏花音と葵に言わなくちゃいけない。

そのことを言ったら、私はもう、ここにはいられない。

「お母さん。杏花音、お母さんに会いたい。」

杏花音はお母さんのことを好きだもんね。

私も桜木さんのことは、本当の母のようで大好きだった。

「そんなこと言うなよ。俺だって、父さんや母さんに会いたい。でも、俺らは、一人じゃないだろ?」

葵。ごめんね。

「そうだね。」

そんな話を聞きながら私は、心のなかで謝ってしまう。

ごめんね。杏花音、葵。